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田村 大(たむら だい)
2016年に似顔絵の世界大会であるISCAカリカチュア世界大会において総合優勝した後に独立。躍動感あふれるスタイルを最も得意とし、著名人からも高い評価を受けている。Instagramアカウントのフォロワーは10万人を越え、NBAからの密着取材やNHKやTBSでも取り上げられるなど注目度も高まっている。アートの分野でも、新たな挑戦を続けながら着実に実績を積んでいる。
https://dt-ltd.tokyo


スポーツメーカーのデザイナーから似顔絵アーティストというキャリアを経て、現在はフリーのイラストアーティストとして活躍する田村大さん。長年積み上げてきた確かな画力と、強いリスペクトが反映されたアスリートのイラスト等が高い評価を受け、コラボレーションやメディアへの起用など多数の実績を持ち、2021年には初の画集の発売と共に個展を開催するなど年々活動の幅を広げています。
そんな田村さんの作品制作に欠かせないという画材がコピックスケッチ。長年のコピック愛用者として、ユーザーインタビューにお答えいただきました。

食品メーカーの広告のために描いた錦織圭選手のイラスト
日本フェンシング協会 公式コラボレーションイラスト

ー現在はイラストアーティストとして活躍されている田村さんですが、これまでに様々なキャリアを積まれているとお聞きしています。アーティストとして至るまでの経歴を教えてください。

絵を描くことは小さい頃から好きでしたが、バスケットボールも大好きで高校も大学もバスケ部に所属していて部活を中心に活動していたので、本格的に描くとかではなく授業中に絵を描いて楽しむようなタイプでした。
大学3年の就活の時期になって、自分はまたこれからも仕事の合間に絵を描くのかなと思ったら、漠然とそれは嫌だなと思って、専門的に絵やデザインを学んでそれを仕事にしたいって考えたんです。そこでデザインの専門学校に入学するために、大学やバイトを続けながらアトリエに通って受験のための勉強を始めました。それまで絵の勉強をしたこともなかったし、補欠合格でしたがなんとか入学することができて、23歳から専門学校でデザインを学び始めました。

ー専門学校ではどんなことを学ばれたのですか?

専門学校の1年生の時はオールジャンルを勉強して、2年生からはビジュアルデザインコースに進みました。変わらず絵を描きたかったんですけど、やっぱりデザインを学ぶ場なので、絵を描いていると変な目で見られるんですよね。就活を考えると絵を描いて生活するのは難しいというのがわかってきて、専門学校では広告デザインをしっかり学びました。
その甲斐とご縁もあってバスケ用品のメーカーにデザイナーとして就職することができました。好きなバスケに関わりながらチームのロゴを制作したりユニフォームのデザインを担当させていただいたりしました。

― 大好きなバスケットボールに関わりながらのデザイン業務は充実していたと思います。そこから絵の仕事に切り替えた転機は何だったのでしょうか。

メーカーのデザイナーとして働く日々のなか、ある時「田村さんは絵も得意だから(商品として)似顔絵Tシャツを描いてくれないか」って頼まれたことがあったんです。それで描いてみたのはいいんですが、評判は良かったけど自分的には全然納得いかない出来で。ちゃんと似顔絵を学んでみたいと思って調べたら、似顔絵専門会社が開催しているプロ養成コースの似顔絵講座があったのでそこに通うことにしました。


― お仕事をしながら更にスクールに通うことに迷いはなかったのですか?

そうですね、気軽に学べるコースもありましたけどやるならプロ養成コースだと思いましたし、全然迷いはなかったです。大好きなバスケも週末の趣味として続けてはいましたが、24歳の時に足を怪我をしてしまったのもあって、これを前向きにデザインや絵に専念するきっかけとして捉えました。そしてプロ養成コースで似顔絵の面白さと難しさを知って、このまま会社員として働き続けるなら、絵を描くっていう好きなこと自体を仕事にできたほうがいいんじゃないかって思いがあり、デザイナーを辞めて似顔絵の道に進むことにしました。

ー 似顔絵業界での活躍を経て、個人のアーティストとして独立されたんですよね。似顔絵を極めたいと思った時にはすでに独立することも視野に入れていたのでしょうか。

具体的にではないですけど、ある程度はしていました。似顔絵の世界大会があると知って、社内で入社3年目に出場できた先輩がいたので自分も必ず3年以内に出場して、その大会で優勝するということを目標としていました。

ー似顔絵の世界大会優勝というのも並大抵の努力では達成できないことと思います。目標の達成に向けてどのように取り組まれていましたか。

目標通り、入社して3年目に世界大会に初出場をすることは出来ました。でもその年はあまりいい成績が取れなくて、2015年に2回目の出場メンバーに選んでいただいた時も総合4位という結果だったんです。すごく悔しくて、もう次に出た時こそ絶対に優勝すると決めました。
まずは1年間世界一絵を描いたっていえるような自信をつけて挑もうと思い、似顔絵の営業中は10時間描いて、仕事から帰ったらどんなに疲れていても必ず1枚の作品を仕上げるっていう毎日を過ごしました。人生で一番絵を描いていた時期でしたね。あと、過去の大会の分析もして、どういう作品が評価されるのかというのも熱心に研究していました。技術力の高い先輩にコピックのカラーリングのテクニックを教えてもらったりというのもすごく参考になりました。

ー世界大会で田村さんが使用画材に選んだ画材がコピックだったとのことですが、コピックを選んだ理由は何だったのでしょうか。

世界大会の会場にはデジタルで描く人もいれば、油絵具で描く人もいるんですが、世界中から集まる出場者のなかでもコピックを使ったことがある人や知っている人は結構多いんですよ。見る人が経験したことのある画材で凄いカラーリングを魅せることができれば、その分「コピックでこんなに描けるの?」って驚いてくれるんですよね。テクニックを魅せてギャップを抱かせるためにも僕にはコピックが最適でした。
ライトに仕上げるイメージだったコピックでどれだけ重厚感を表現できるか、というのにこだわって、支持体をキャンバスに変えたり、塗り込み方を変えたりして自分なりのスタイルを作っていきました。

ーちなみに、コピックを使い始めた時期はいつ頃からでしたか?

似顔絵のプロ養成コースに通い始めてから、輪郭などの主線を使う教材としてこれを使うんだと教えてもらったのが最初です。今でこそ多くの漫画家やデザイナーが使っている印象がありますが、当時はそういう情報もあまりなくって、それまでそういう画材があるってことも知りませんでした。着彩に使うようになったのは更に入社後のことですね。

ー デザイナー時代のお仕事の経験などからデジタルツールも使いこなしていらっしゃると思いますが、今なおコピックで制作を続けている理由や想いをお聞かせいただけますか。

1点物の原画の価値を大事にしているので、まずアナログ以外で描こうっていう選択肢があんまりないんです。じゃあ絵の具を使うかといっても、色を作る工程がわずらわしい。コピックは最初から色が決まっているので色を作るって手間がかからないっていうのがまず利点ですね。
それに、コピックっていつどこで買っても毎回絶対同じ色が出るんですよ。似顔絵を描く時にスタンダードな画材として使っていた色鉛筆があったんですが、生産ロットごとに同じ色なのに色のブレを感じることがあって困ることもあったんですよね。コピックはそれがないのが凄いです。
あと、インク補充ができてサスティナブルなところも気に入っています。今日も持ってきたよく使うコピックたちは、もう10年くらい前から使っているものが多いですよ。

ーインク補充をしながらお使いいただけていて嬉しく思います。コピックで特によく使う色、欠かせない色はありますか?

好きな色はE71、R14、B24が好きですね。グレーならクールグレー(C系統)が自分の好みだし、綺麗に塗れる気がして一番好きです。

ー例えば、肌を塗る時は何色くらい使用しますか?

4〜5色くらいの同系色を重ねています。描く人物によりますが、日本人の方をモデルにした時によく使う色はE30、E11、E70、E71、E74などです。薄い色から塗っています。

ーアナログでずっと絵を描いてきたことで得たと感じる力はありますか。

絵って状況判断の連続だと思っていて、最終的にイマイチと感じる絵っていうのはイマイチな選択をし続けてきた集合体なんだと思うんです。的確な線を選び続けていったら、いい絵ができると思っているんです。だから毎回自問自答しているような状態で絵を描く時間は自分と向き合う時間でもあると思っていて、仕事をするうえで的確な判断をするためにその感覚が役立っていると思います。

ー主にInstagramに絵をアップすることで多くの人に絵を見てもらえるようになったり、お仕事関係の出会いを作ったりされたんですよね。上手くいかなかったことや苦労もありましたか?

もちろんあります。やっぱり独立してすぐはアカウントのフォロワー数を増やすことが大事だと思っていたので、色んな人に向けて投稿しましたが、なかなかシェアしてもらえなかったです。何をすれば反応を貰えるかがわからないので賭けだなと、一喜一憂しながら投稿していましたね。DMで「(有名人の)◯◯の友達だから絵を描いて」って言われて描いたけど反応がなくて、確かめたらただのファンだったとかもありました。

あと、苦労ではないですけど絵は毎日描いていました。絵描きになりたいのに何ヶ月も絵が完成しないのはまずいし、売れるかわからないとネガティブになって負のスパライルに陥る人も多いだろうと思ったので、1日1枚完成できるような速度で毎日描いて発信していこうと決めて取り組んでいました。

ー現在、絵を描く時間はどのくらいですか?

日中の仕事は打ち合わせや取材が多くて外に出ることが多いので、そういう仕事を済ませて日課のトレーニングが終わった後の夜10時から夜中2時頃までを制作時間としていて、その時間は毎日絵を描いています。前と違って「とりあえず描く」というより目的(仕事)があるから描くという風になったので、今は仕事以外の絵はあまり描いていないです。
ただ、その1日の制作時間では、これを完成させるぞと決めたらどんなに疲れていても描き切ります。自分と戦っているような感覚ですね。

ー2021年には初の画集を発売すると同時に、個展も開かれていました。

個展は、画廊の方にお声がけいただいたことをきっかけに開催することにしました。これまで描いたことのない、自然や動物などのジャンルに挑戦してみませんかってアドバイスをしてくださったんです。個展のために描くものも、作品の大きさもチャレンジでした。
僕の活動はイラストとアートで分けていて、イラストの方ではアスリートを描かせていただいたり、企業とコラボしてオーダーに沿った絵を描きます。イラストは相手や発注者の世界観を聞いた上でその人に喜んでもらうために描きますが、個展に出したような作品は逆で、いかに僕の世界に引き込めるかを目指して描いています。最初から絵を買う人の顔が見えてないので、なるべく自分の中から光が出るようなものを大事にしたいと思って制作に取り組みました。

ーテーマや取り組み方は変化しつつもずっと手を止めずに絵を描き続けられていますが、モチベーションの源泉はどこにあるのでしょうか?

僕はあんまりモチベーションを上げるっていう感覚はないんです。絵を描くこと自体が目的じゃなくて、会いたい人と会うとか夢を叶えたいっていうのがあって、その手段として絵を描いているので。だから絵を描くこと自体が楽しいとか辛いとかはあんまりなくて、これを描き上げた先に叶うものがあるから闘える、頑張れるっていう気持ちでいます。

ー新しい目標を立てては努力を重ねて実現してきた田村さんですが、次に目標としている像はありますか。

世界を代表するアーティストになりたいです。日本の活動でとどまらないで、特にアメリカだったり、中国だったり、グローバルにお仕事の幅を広げていきたいと思っています。

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