黒田 潔(くろだ きよし)
1975年東京生まれ。多摩美術大学大学院修了。 2003年よりフリーのイラストレーターとして、動植物を中心にしたモノクロの線画を軸に、広告や壁画など多方面で活動。 作家活動も行い、バルセロナのアートプロジェクト“Place”への参加や、神田明神の天井画などを手掛け、 東京都現代美術館、ナムジュン・パイク・アートセンター等国内外の展覧会に参加。 ニューヨークADC賞ブロンズ受賞、CS DESIGN AWARD、他多数受賞。 作品集に「森へ」(2010 / ピエ・ブックス)、「Water」(2015 / POST) などがある。
Website:http://www.kiyoshikuroda.jp
Instagram:https://www.instagram.com/k_u_r_o_d_a/
モノクロの繊細な線画を軸に、装丁画から巨大なウォールグラフィックまで多彩な表現活動をされているイラストレーターの黒田潔さん。
さまざまな画材・道具を使用されていますが、このたび新たな表現の模索のためにコピックをお試しいただきました。
ーこれまでの経歴についてお聞かせください。
大学院では、グラフィックデザインを学びながら、課題以外にもイラストレーションを描いて発表していました。学生だった頃の90年代は、多くの公募からスターが生まれている時代だったので、自分もそのチャンスを狙って、沢山のコンペに応募しました。もともと広告に使われているイラストレーションにとても興味があったので、デザイン事務所で3年程デザイナーとして仕事をした後に、イラストレーターとして独立しました。
イラストレーターとしてスタートしてから、今年で20年目になるのですが、広告や壁面グラフィック、ファッションやCDジャケットなど様々なお仕事をさせて頂きました。
ーどのようなきっかけで動植物や自然をメインのモチーフとされる様になったのでしょうか?
イラストレーターとしての再スタートとして、植物と昆虫をメインとしたテーマの作品を表参道のROCKETで発表しました。最初の作品イメージから「植物」のイメージが定着して、デザイナーやアーティスト達との人脈が広がりました。デザイナー時代に担当した平井堅さんのCDジャケットに植物の線画を描いたのも良い転機となりました。
ーご自身の表現活動に強い影響を受けた「もの・ひと・こと」はありますか?
学生の頃に好きだった画家やデザイナーは沢山いるのですが、デザイン事務所に入った頃、資料探しで立ち寄った洋書屋で眺めていた、VOGUEやDAZEDといったファッション誌に載っていたイラストレーションがとても魅力的でインパクトがあり、影響を受けた気がします。
ークライアントワークと作家活動、それぞれどのように向き合い制作を行なっていますか?
言葉で表せない事を絵で表現することと、描きたいと思った衝動を何かしらのかたちで表現して相手に伝えられるようにすることを心がけて制作しています。
クライアントワークでは、相手が求めているものを出来るだけかたちにする努力をしています。
ー今回、マルチライナーからコピックスケッチ、インクまで色々試していただきました。それぞれはじめて使われた印象を教えてください
普段はモノクロの筆ペンで描く事が多いのですが、マルチライナーの太さの違うペン先は、初めての感覚や発見が多くとても刺激的でした。
今までは、線を美しく描く事を第一に心がけていましたが、線の勢いや密度のある線画の中から生まれるタッチなど、今までの線画をどう崩して変化させていけるのか、とても実験的な制作が出来ました。コピックスケッチは、色による印象の変化や柔らかなタッチなど、まだまだ試作中ですが、とても楽しみながら制作が出来ています。
ーお気に入りの製品や新たな表現方法は見つかりましたでしょうか?
マルチライナーのブラシタイプは、筆の筆圧が残りながら滑らかな線が描けるので、とても使い心地が良かったです。ひとつの絵の中にブラシタイプと細いタイプを同時に使う事で、線の勢いやカスレなど、偶発的な表現も取り入れる事が出来たのは、新たな発見でした。鉛筆のラフの印象の中にある線の自由な動きは、タイプの違ったペンを使用することで、ラフのテンションをそのままキープして表現出来た気がします。
ー普段どのような画材を愛用されていますか?
鉛筆、水彩ペン、筆ペン、アクリル絵具が中心です。
クライアントワークでは、デジタルツールを使用しての制作が中心でしたが、用途や媒体によってアナログの作品で納品する機会も増えてきました。展覧会で発表する作品は、その時のテーマやコンセプトによってアナログとデジタルツールを使い分けています。
ー黒田さんは教鞭もとられていますよね、授業の中で大切にされていることを教えてください。
イラストレーションの指導は今でもなかなか答えが見つけられず日々苦戦しているのですが、学生には、ひとつの方法論に拘らず、自分の作品を良い意味で壊す位の実験的な挑戦を繰り返す気持ちを持つことと、時間をかけて制作するという自分の限界値を知ることも学生の内に出来る大切な事だと思って指導しています。
ーその上で画材を使って表現活動を楽しんでいる方にメッセージがあればお願いします。
自分に合う画材と出会うことの喜びはとても楽しく幸せなことです。
求めている表現にぴったり合う画材をどんどんと見つけていくべきだと思います。
ー現在注力していること、この先挑戦したいことはありますか?
アニメーションの表現に興味があるので、挑戦したいと思っています。
ー最後に、コピック作品も展示予定の展覧会について教えてください。
8/17~9/12(※会期延長となりました!)まで新宿ビームスの5FにあるB GALLERYで個展「花と実」を開催しています。
コピックを使用した作品を普段、SNSで発表しているのですが、その中からいくつかの原画を展示しています。コピックで描いた原画をもとに制作した立体作品も展示しているので、素材の違った作品を是非、見比べて頂きたいです。
ー黒田さんありがとうございました!今回、期間限定でマルチライナーを使用して描き下ろしていただいだぬりえをご提供いただきました。ぜひマルチライナーのブラシタイプを使って、主線のなぞり書きにも挑戦してみてください!
※ぬりえの配布期間は終了いたしました。