星野 桂 KATSURA HOSHINO
1980年滋賀生まれ。アニメーター業に就いたのち、2002年集英社より『ZONE』でデビュー。2004年、「週刊少年ジャンプ」誌上にて、『D.Gray-man』の連載を開始し、2006年と2016年にはTVアニメ化、2007年と2008年にはゲーム化。コミックスは現在、28巻まで発行され、累計2400万部を超える人気を博している。現在は「ジャンプSQ.RISE」にて本作を連載中。
instagram:@katsura_5600
コピックアワード2023で審査員を務めていただいた漫画家・星野桂先生。ご自宅にはコピック全358色のほか、コピックシリーズ周辺商品まで揃えていただいており、現在では主に趣味の創作活動にコピックをご愛用いただいています。そんな星野先生に今回は特別に愛猫のチョロちゃんを描き下ろしいただきながら、先生について、コピックについてお話を伺いました。
ーコピックアワード2023では審査員を務めていただきありがとうございました。
改めて先生について、先生が漫画家を目指そうと思ったきっかけを教えてください。
実は私、漫画家を目指してたわけではないんです。ある漫画編集部で編集アシスタントのアルバイトしていたことがあったのですが、編集部の人が先生のもとへ原稿取りに行くのに命を削っているのを見て、 この仕事は恐ろしいな、絶対嫌だと思っていました。
当時はアルバイトをしつつ、絵本作家を目指して持ち込みにも行ってたんですが、全く引っかからなくて。そんな時、(今はある漫画編集部の編集長の)友人に「漫画を描きなよ」って言われていました。それから1年ぐらい経った時に、 絵本の活動も全然パッとしないし一旦東京を離れて京都で姉と住んでた頃、9.11のテロの様子がテレビで流れて。当時は家事もせず、ただ寝てるだけの生活だったんですが、そのニュースを見た時にすごく駆られるものがあって……それで漫画を描き始めたんです。
で、その漫画を描いている途中で、この漫画を編集部に持ち込んでどこにも引っかからなかったら絵を趣味にしようと決めました。約束の当日になり、漫画を描きあげられてなかったけど、持ち込みに行ったのが有名な週刊少年ジャンプの編集部でした。そしたら、全く出来上がってない鉛筆原稿だったのに担当になってくださって。そこから、「これからもネームを見せてください。東京にもまた上京してください」となって、今に至ります。
ー持ち込みに行った日のことをさらに詳しくうかがいたいです。
夕方の18時の約束だったんですけど、京都に住んでいたので15時ぐらいには新幹線乗らなきゃいけない。けれども原稿はできてないから嫌になって編集部に連絡もせず家でパジャマで寝ていました(※当時のお話です)。
19時過ぎぐらいになって、姉が仕事から帰ってきて「なんでまだ家にいるの」って怒られて、出来上がっていない原稿を姉がファイルに詰めて、パジャマ姿のままの私は引きずられて駅まで連れてこられ、新幹線に押し込まれて編集部に向かいました。
ラストシーンまで鉛筆状態の未完成原稿でしたが、編集の方は私が描いたものを面白いって言ってくださり、そこから、自分が描いたものにアドバイスをくれる人がいると思ったら楽しくて。
そこからは描いたら見せてを繰り返し、 気が付いたら読み切りに出そう、連載会議に出そうってなって、途中で「私って漫画家になりたかったんだっけ」って思ったのですが、もう決まっちゃったからやらないとと思ってやり始めて、 10週で終わるだろう、打ち切りになるだろうって思っていたけれど終わらなかったんです。
その時に、「私、漫画家になんなきゃいけないの」って、覚悟を決めました。そこからは地獄でした(笑)
ーまるで漫画のようですね。過去から現在に至るまでのお仕事の作画環境についてもお聞かせください。
2010年頃まではアナログでカラー原稿を描いていました。当時はコピックのことが大好きで使っていたというより、小畑健先生がコピック使われてるのを知って、みんな使ってるコピックを使えばそれっぽい絵が描けると思って……締め切りに間に合わせることだけを必死に考えて楽しいとか感じることなくとにかく塗り続けてただけだったんです。
そこから3.11があって、アシスタントさんが来れない、 在宅に切り替えるしかないってなって、一気に自分の作品をカラー・モノクロ原稿ともにデジタル作画に切り替えました。その当時は「塗りのやり直しができるのがすごい!」って思っていたのですが、デジタルに移行してからしばらくして、これまでしばらく離れていた アナログの文房具や画材の方に目が行くようになって。そこからちょっとずつ、趣味として文房具や画材を揃えていきました。
ー最近になって改めてコピックをたくさんご愛用いただいていると伺いました。
コピックはもうしばらく常に机の傍らにはあったんですけど、もう古い付き合いみたいな感じなので、新しい画材っていう感覚がなかったんです。それが、この間のコピックアワード2023で、全く知らない技法を皆さんの作品から知って、それでもう頬をぶたれた気持ちで。コピックのことはもう十分わかってると思ってた自分を殴ってやりたくなって。(笑)
コピックって、好きな色をパっと見つけてパって取ってすぐに塗ることができるところが好きです。このスピードは、すごく私に性に合ってるってことが改めてわかりました。最近は朝起きたときにスレッズ(instagram)に「おはよう。今日もコピックコピック〜」と書き込むほど、コピックが好きです。
仕事から離れて、趣味としてコピックで好きに描いたら楽しかったんです。今はインスタでコピック好きな仲間を増やすみたいな活動をしています。
自分のデジタルの絵より、アナログの描いた絵の方がすごく好きなんです。デジタルは納得いくまでできますけど、 アナログのこの一発勝負感・ライブ感といいますか、心が乗るのでやっぱり念がこもるんです。デジタルの戻るボタンって画期的だけど、戻れないアナログの絵の緊張感っていうものにまたクリエイターさんたちは戻り始めてるんじゃないかなって、最近SNSを見てると思います。いつかまたDグレ(D.Gray-man)でカラー原稿やりたいなと思っています。
ーよく使うコピックの色はありますか?
写真に写っているカラーをよく使います。薄い色でアタリを取ってから描いていきます。
今はコピックの優しい色だけでどうやって成立させるかを研究してて、大久保つぐみさんのような"揺らぎ"をコピックで表現したいと思っています。今まで(仕事では)コピックでパキッとしたイラストを描き続けてきたので、パキッとしてないコピックっていうのをやりたいってなりました。
コピックどうやって使えばいいですかっていう方にも、とりあえず薄い色から塗っていくのを私は推奨してます。
ーコピックを使った、お気に入りの表現方法はありますか?
私は色鉛筆で合わせるのが好きですね。コピックで着彩した上から色鉛筆の色を乗せた時に、すごくパキっと綺麗に色が乗って 、いかにも別の画材を合わせたっていう感じがせずに馴染むんです。
色鉛筆はファーバーカステルのポリクロモスが私は1番合うなと……いろんなメーカーのものを買い漁ってたくさん試してみたんですけど、これが1番コピックに合うと思ってます。
ー先生はコピックだけでなく他の画材についてもお詳しいですよね。
新しい商品についてはどのように調べて、どこで買われますか。
コピックと相性のいい紙をブログにあげてくださってる方の情報を見たりして、見つけたらすぐamazonで注文しています。家に商品が届いたら、ご飯食べた後に試して……また寝る前に試して……と楽しんでいます。
とりあえず心が荒れるとamazonで画材を見るんです。海外のなかなか見かけたことがない変な画材とかがたまにちょろっと出てくるので、知らないぞと思ったらとりあえず試しに買う。朝起きたらとりあえずいつもネットサーフィンします。そうやって調べてるとamazonが気を利かして、なんか面白いのあるよって提案してくれます。
ー今回は愛猫チョロちゃんを特別に描き下ろしいただきました。
死ぬほどチョロの顔見ながら、どこがチャームポイントなんだろうと思いながら描きました。私は写実的な絵が好きじゃなくて、いかにも絵に起こしたっていう絵が好きなんです。なので、絵には絵らしいものがないとなって思っちゃう。そのままの通りに描かずに、ちょっと自分の入れたい世界観を混ぜながら描くっていうのが好きです。
綺麗な色で終わらせるだけでなく、濁色が出るのが好きなので、綺麗なチョロの色だけを目立たせて、ちょっと濁らせるとかするのがちょっと好きだったりもします。コピックって、すごく発色がいいし、色は全部綺麗じゃないですか。だから、ちょっと彩度を落とすみたいなことをした方がなんか自分はやりやすいです。
アナログってデジタルと違って、終わりを決めるのも1つの醍醐味ですよね!
ー星野先生には、さらにコピック・アイシーブースが出展したコミックマーケット103(2023冬)のブース用キービジュアルも描き下ろしいただきました!
ぜひコピックメイキング動画もご覧ください。
ー星野先生、素敵なイラスト、インタビューをありがとうございました。
★星野先生のコピックアワード2023 審査員インタビューもぜひご覧ください。