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窪之内英策

窪之内英策(くぼのうち えいさく)

高知県出身の漫画家、イラストレーター。
代表作は「ツルモク独身寮」「ワタナベ」「ショコラ」など多数。
可愛らしい女の子のイラストがネットを中心に話題となっており、学生から大人まで、幅広い年齢層に支持されている。

   
     

このようなイラストを描いてしまうほど、日頃からコピックを愛用してくださっている窪之内英策さんにユーザーインタビューを行いました。窪之内さんが普段使用している画材とコピックとの使い方や、イラストを描く上でのこだわりなど、イラストを描く人にもタメになるお話をしていただきました。

    
 

窪之内さんとコピックについて

— コピックを使い始めたきっかけと時期を教えて下さい。

窪之内:元々はカラー原稿を描くのに絵の具を使っていたんだけど、絵の具を使う手間が面倒になってきて……20年ほど前、新たな画材としてコピックというものがあると知り、使ってみたのがきっかけです。

—コピックを使い続けている理由は何ですか?

窪之内:かゆいところに手がとどくような豊富な色のバリエーションと、ブラシの使い勝手の良さですね。インク切れしたときのために2本ずつ、全色を所有しています。
ブラシの方しか使わないのですが、ブラシだけで細い線も太い線も加減次第で思いのままに描けるのが気に入っています。
(※コピックスケッチの両端はスーパーブラシと呼ばれるペン先と、ミディアムブロードと呼ばれる四角いペン先がついた仕様になっています)

色見本

—色見本帳も自作なさったのですね。

窪之内:コピックの色をいちいち塗って見て確認するのが手間だったので、普通に売っている単語帳をそのまま使用して作りました。この紙は画用紙に近いものだけど、自分の色見本帳を作るなら普段使っている紙で作るべきですね。

—窪之内さんに、日頃から特によく使われている色のコピックを厳選して持ってきていただきました。

窪之内:BV25とT-4は日本人の黒髪を表現する時にちょうどいい色だと思って、よく使っています。E71は茶髪の元気な女の子のイメージのときに使いますね。RV52やRV63のように少しくすんだピンク色も使いやすくて気に入っています。

私物コピック

—肌色にはR000とCM2を採用されていますが、E系は使われないのですか?

窪之内:E系は試したけど、他の色とのバランスがあまり良くなかったんです。主線が鉛筆なのもあり、肌がくすんでしまう気がしてあまり使っていません。ほのかに赤みがかったR系のほうが透明感が出る気がして好きですね。
BV0000などを肌のベースに使うことはありますよ。照明の色によってそのものの色って決まってしまうので、その時のイメージに合わせて使い分けています。
(※CM2:コミックマーカーの品番。コミックマーカーは製造が終了しています。)

—コピックのグレーは4種類(C,N,T,W系統)ありますが、T系の色を選んだ理由を教えてください。

窪之内:W系は人気みたいだけど、あまり使わないかな。T系は塗った後に時間が経つとリアリティが出る感じがするので好きです。

         

「イラスト」である意味

-絵を描く際に参考にしているものはありますか?

窪之内:ポーズや服装のアイデアのために、雑誌を見たりすることはあります。でも、そこにあるものをそのまま描くことはしない。自分なりにアレンジすることは必要ですね。
大げさに表現しないと伝わりにくいこともあるので、よく見ると「こんなポーズできないよ!」というポーズを取っていることもよくありますよ。

ハイライト例

—窪之内さんのイラストでは混色やグラデーションといったテクニックは使われていないように見えますが。

窪之内:イラストにリアリティは出したいけど、画風がもともとリアル寄りなので、何色も使って陰影をしっかりつけてしまうと、どうしても写真のような出来になってしまうんですよね。
「イラスト」の空気感は大事にしたいので、あえてあまり濃淡をつけないようにしているんです。陰影をつけて立体感を出すのではなく、すべてを塗りつぶさずにハイライトを入れることで立体感を出しています。

白バック

ー背景がしっかり描かれたイラストもある一方、キャラクターのみ描かれている作品も多くありますね。

窪之内:1枚絵を見た人に、その絵のストーリーや絵の外にあるものを想像してもらいたいんです。そのイメージのために状況を限定したくないから、あえて背景を描き込まないことが多いですね。情報を描き込みすぎたら、イラストというよりは漫画に近づいてしまいますから。
人物の主線も、きっちりと描いていない所があります。その箇所に力をいれないことで、本当に見て欲しい顔や髪の表情などに焦点を持ってきているんです。

画材を選ぶ、極める

—先生の作品は主線に鉛筆やシャープペンを用いてペン入れをしない点が特徴的ですよね。

窪之内:柔らかい雰囲気を出したいので鉛筆やシャープペンを主線に使っています。ペン入れをする時はほとんどないですね。
「主線が鉛筆だとコピックで塗った時ににじんでしまうのですが……」という質問をTwitterで よくされるんですが、硬い芯(先生は主にFの鉛筆を使用)を選んで、薄い線で描いていけばそういったことは少ないですよ。

—紙の選び方で重視していることはありますか?

窪之内:高いのから安いのまで、それこそ画用紙や水彩紙などの色々な種類のものを試したんだけど、今では普通のコピー紙に落ち着きました。
紙に関しては発色よりも色を乗せたときの質感を大事にしているので、鉛筆で描くと少しひっかかりがわかるような、粗めのものを使好んで使います。紙は自分の作風に合ったものを選ぶことが大事です。

色鉛筆使い方

—油性色鉛筆を多くお持ちだということですが、コピックと合わせた使い方を教えてください。

窪之内:コピックでは表現しきれないほど繊細な表現をする時、例えば女の子の顔にメイクをほどこす時などにも使いますし、模様を入れる時やハイライトにも使います。
あとはコピックで塗っていてどうしても出てしまう色ムラを目立たせなくする時にも活躍します。昔は「色鉛筆の白って、この世で一番いらないよなあ」って思っていたんだけど、今では一番よく使います!
ムラができてしまったところに、白色鉛筆をうすく伸ばしてから、違う色(鉛筆)を重ねることで色ムラを目立たせなくしているんです。この作業だけですごく時間がかかっています……。

          色鉛筆使い方

—ムラを出さないようにコピックで塗る時のコツはありますか?

窪之内:素早く塗る!これに尽きます。素早く塗るために、「ここから塗り始めて、ここまで一気に塗るぞ」というルートを決めておくのも大事。途中で紙から筆を離すとそこでムラになってしまうので、一筆書きのイメージで。コピックに慣れていても、あまり大きな範囲を塗ろうと思うと難しいですよ。

    
 

   

線画にペンを使わないといけないとか、そういった既成概念に捉われているからつまずいてしまう。絵に正解はないから、自分が描きた いと思うような描き方を追求していけばよい……と窪之内さんは仰っていました。
ペンの例だけでなく、紙に関しても自分の好みや表現方法に一番合っている紙を見つけるべき、とイラストを描く時に悩んでいる方へアドバイスもいただきました。今回の例を参考に、イラストにおける「自分の個性」をいまいちど画材の選び方から見直してみてはいかがでしょうか。

 
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