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Copic ink
ヨシタケシンスケ1973年、神奈川県生まれ。 絵本作家。挿絵やスケッチ集なども手がける。 これまでにない切り口と発想で次々と生み出す絵本は、 読者を魅了し続けており、第8回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞を受賞。
実はコピックユーザーという人気絵本作家のヨシタケシンスケさんにインタビューをさせていただきました。ヨシタケさんの作品のアイデアの源や画材についてのこだわりなど、ここでしか聞けないお話が満載です。ヨシタケさん愛用のマルチライナーとコラボさせていただいた期間限定のキャンペーン情報もありますので、ぜひ最後までご覧ください。

— インタビューをさせていただくにあたり、改めてヨシタケさんの作品をいくつか読ませていただきました。ヨシタケさんの絵本はユニークな作品ばかりですが、絵本のアイデアはどのようなときに思い浮かぶのでしょうか?

僕には二人の息子がいて、今年上の子が中学校2年生になったんですけど、親として一緒に子供と生活してる時に絵本のアイデアを思い浮かぶことがすごく多いです。子育てをしていなかったら絵本を作れていなかっただろうなと思いますね。 絵本の作り方として、自分が子供の頃に思っていたことや知りたかったことを、今大人になった自分が当時の自分に向けて描いているところがあります。 自分の子供を見てると、自分の子供の時と同じところでつまづいたり怒ったりしてるんですよね。誰も教えてもいないのに自分の子供達も同じ疑問を持ったりとか、大人の理不尽さに怒ったりとか。そういう時に初めて「このテーマはある程度の人が共感してくれる内容になるんだろうな」「絵本にしてもいいはずだ」と思って作品にしていきます。

— ほかにも共感してくれる人がいそう、という仮定のもと作られていっているのですね。実際に作品を見てみて、大人のファンの方が多いのも納得と感じました。

読者の方から色々な感想をいただくんですが、その中でも嬉しいのが「大人が読んでも面白いですね」って言葉です。僕が子供の頃に知りたかったこととか好きだったことを絵本にしてますが、僕も大人になっちゃったので、大人の僕も楽しめる絵本がいいんです。 基本的に読んで楽しんでほしいのはお子さんなんですけど、一緒に読んだりとか、買ってくれるのは大人ですよね。だからそれを一緒に読む周りの人も楽しい方がいいなと思っています。いろんな世代の人たちが同じ本の中からそれぞれの受け取り方ができるものが、商品として一番お得なものだろうなという思いがあって、お子さんはお子さんなりに、大人は大人なりの面白がり方ができるものを目指して描いています。

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2020年7月発売の新作『ねぐせのしくみ』(ブロンズ新社)

— 子供の周りの人も楽しめるのはお得ですし、人気がでるのも納得です。 新作の『ねぐせのしくみ』はどのようなきっかけで制作されたのでしょうか。

『ねぐせのしくみ』は、髪の長い人はすごく寝癖がつくと思うんですがそんな人の「寝癖がどういうメカニズムでついているのか」を解明した絵本になります。僕の子供が、毎朝すごい面白い寝癖をつけて起きてくるんです。これがまあ面白くて、すごく新鮮な驚きをもたらしてくれるんですね。 寝てる間ってみんな意識がないので、この本で描かれてるようなことが全くの嘘であるとは証明できないですよね。寝ている間にサンタさんが来ているかもしれないし、変な人たちが来て寝癖をつけているかもしれないし……。そんな物事の捉え方の一つになってくれたら面白いんじゃないかなと思って考えました。 実は結構古いアイデアで、5〜6年前に出していた企画です。絵本作家になってすぐぐらいの頃に思いついていたのですが、このタイミングで発売できました。

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— 素朴な疑問なのですが、ヨシタケさんの描かれる絵本の主人公には名前がないですが、何か意図があるのでしょうか?

あえてそうしているわけではないのですが、名前をつけてもいいんだけどつけなくてもいいかなーって思えるようなお話が多いので、結果的につけてないだけなんです。いろんな人が読むので「これ俺のことみたいだな」とか思いながら読んでもらいたいなと思うと、名前があってもなくてもいいかなと。今後はちゃんと登場するお母さんが名前を呼んであげたりとか、主人公が自分のことを名前で読んだりとかあっていいなって思うんですけど、なんか名前つけるの下手なんですよね……。

— ヨシタケさんの絵本の中には手書き文字のものと、印刷した文字がありますが、どう使い分けているのですか?

登場人物の子供達の発言や言葉だったりとか台詞とかは手書きの文字で、ナレーション部分は印刷した文字と使い分けています。同じ言葉でも活字で読むのと、手書きの文字で読むのとでは全然その表現として読み方も伝わり方も変わってくるので、上手に使い分けられるようになりたいなって思ってます。教科書みたいな綺麗な手書きの文字と、居酒屋のメニューみたいな同じ言葉でも伝わり方が違うので、やっぱりその字体から出てくるその伝わり方って言うのは結構考えながら、僕の字で書いたときに時に一番納得してもらえるような言葉を探したいなと思ってますね。

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僕は小学生の頃から字が汚いと言われたんですよ。先生にも怒られて「もっと丁寧に書きなさい」と言われていたくらいで。でも、イラストの仕事をし始めた頃に中学生が主人公のお話の本のイラストを担当した時、デザイナーさんから本のタイトルの文字も書いて欲しいと言われたんです。「ヨシタケさんの文字は中学生っぽいからぜひタイトルも書いて欲しい、大人にしては子供っぽい字だから今回の本にはすごく合う」というような事を言ってくださって。 だから子供みたいな文字しか書けない人は、子供っぽい文字が必要なところに仕事がある。なんかそういうところも含めてなるほどなって思ったし、まさにお子さんが読むものの中で、「こんな字の汚いおじさんがいるんだったら俺の方が上手だよね」って思ってくれる子がいたらそれはそれで僕のやってる甲斐がある、そういう意味でもありがたい機会をいただけたとすごく思いますね。

— ヨシタケさんは普段作画される際にコピックを使ってくださっているとのことですが、どの製品を使用されているのでしょうか。

コピックマルチライナーブラックの0.3mmです。僕の絵はちっちゃいので、自分が描きやすい幅のこれを使用しています。色々な製品や線幅を試したんですけど、僕にとってベストな太さが0.3mmだったのでこれに落ち着きました。ちなみに、本にサインをしたりとかする時は同じくコピックマルチライナーの1.0mmのものを使ってます。

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コピックマルチライナーで描かれている絵本の小さな原画。スキャナーでイラストを読み込んで、2倍に拡大して線画にしているそうです。

— かわいらしいイラストの数々の作画にご使用いただけていて嬉しく思います。マルチライナーを選んだ決め手のようなものはあったのでしょうか?

実は……最初の頃は、特に理由がなくてどれでもよかったのでコピックではないメーカーの細めのサインペンを使っていたんです。でも、それが廃番になってしまって。僕はものが変わるのが嫌いなので、ずっと使いたいなと思って買っていたのにシリーズ自体が無くなっちゃったんですね。すごくしょんぼりした覚えがあります。それから「なるべく廃番にならない、変化しないものを使い続けたい」って考えると、コピックはシリーズとしてずっとあるし、これなら無くならないないはずだ!というその安心感が決め手です。 もちろんインクの安定した色や、描き味、品質の確かさっていうことと、安定した供給が僕の中で大事で、コピックのものを使い始めてからはもうずいぶん長いですね。絵を描く人は気に入った画材がなくなっちゃうと、どんなに気に入ってても別のものに変えるしかないなかで、ずっと同じものを買えるというのはすごく大事なことだと思います。

— そう仰っていただきありがとうございます。今回こうしてコラボができてとても嬉しいです!コピックマルチライナー以外にはどんな画材を使用していますか?

イラストはシャーペンで下書きをした上からコピックマルチライナーで描くので基本終わります。アトリエではこの2本しか使わないんです。絵本作家のアトリエ紹介ということで取材に来る皆さんは(そっけなすぎて)がっかりされていますね。 実は自分で決めたルールが二つあって、「本物をみながら絵を描かない」ことと、「鉛筆など消せるものだけで描かない」ことです。デッサンをすると途中で間違った線を消さなきゃいけないけれど、消せなくなるぐらい濃く描いちゃうと後戻りが出来ないっていうこともあり、あるときからもうペンで描こうと思って。ペンで描いたら間違っても「ペンだからしょうがないよね」って自分の中でもう諦めがついて、堂々と描きすすめられるようになったんです。本物を見ないで描くっていうことと、ペンで描くっていうことを始めてから今の絵柄になりました。そういう意味ではそこがちょっと他の方とは違う珍しい部分かなと思います。

— コピックマルチライナーの他にコピックのマーカーは使われていますか?

実は使っていて、コピックスケッチの144色AセットとBセットを持っています。絵本のイラストの着色はデザイナーさんにお願いしてるんですけど、サインの色紙を描いたり、描いた絵を誰かにプレゼントしたりする時にはコピックで色をつけてお渡しすることがあります。

— 着彩はパソコンでデジタル着彩とうかがっていたので、実はお使いいただいているとお聞きできて嬉しいです。

7年くらい前、絵本作家になる前に初めて買いました。当時からイラストに色をつけるのがヘタっていうのは編集の方に理解してもらったうえで絵本作家をスタートしたんですけど、まぁでも僕もせっかくの機会だからちゃんと上手に塗れたらいいな、色を付けられるようになりたいなって思ったんです。それで、絵の具だと筆を洗ったり色を混ぜたり、片付けがめんどくさいなと思ってそこで「コピックだ!」ってひらめきました。色数が多いし、色を混ぜなくてもたくさんあるし、片付けもキャップするだけで済むし。すごく手軽でいいと思って、実は当時「コピックだけしか使わない絵本作家」になろうと思ったんですよ。未来への投資だと思って、大奮発して画材屋さんで買ったんです。

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絵本作家を目指した当時、ヨシタケさんが購入されたコピックスケッチ144色セット。

それで一番最初の絵本『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)の制作中に、線画ができた状態でじつはサンプルで2、3ページくらいコピックで色をつけたんです。それを編集の人に見てもらったら、「色はデザイナーにつけてもらいましょうか〜」って言われてしまったのですが……でも結果的にすごく綺麗に色をつけてもらって、そのおかげでそれ以降もたくさんの人に絵本が届いたのもあり、人に色をつけてもらったほうがいいなと思って自分で着彩をするというのはやめました。

— ぜひ、ヨシタケさんのコピックの着彩の絵本もいつか読んでみたいと思います。

あくまで道具なので、上手な人が使えば映えるのはわかっているんです。でも、悔しいからずっと持っているんですよね。僕がメインで使用する画材ではないんですが、人に渡すような絵にはとても重宝しています。自分の絵本が人に届くかどうかも分からないなかで奮発して買ったのは、その時の自分の決意みたいなこともあったし、そういう意味ではコピックは大きなきっかけです。 道具ってそこにいてくれるだけでいいっていう側面もある気がして、道具に宿る思いみたいなものがあると思っています。コピックが部屋にどさっとあるとかっこいいと思うし、思い入れのある画材ですね。コピックさんのインタビューじゃないと話せないので、初めて言いました!

— 貴重なお話をありがとうございます。最後に、絵本作家を目指す方や絵本作家に興味がある方に向けたメッセージをお願いします。

一つ言えることがあるとすると「焦らなくていい」ということです。 僕は絵本作家になれると思っていなくて、色んな巡り合わせで今このようなことになっちゃっているんですよね。僕はデッサンがちゃんとした絵を描けるわけでもないし、できないことがいっぱいあって、手持ちの技術で体裁を保てる隙間を探すしかないんです。 例えば、絵本って普通は大きく描いて印刷するために縮小するんですけど、僕は逆で、小さく描いて拡大しているんです。色もデザイナーさんにお願いしていますし、そうやって自分ができないことを逆手に取ることで珍しい作り方になりました。それが結果としては人に見ていただく理由になったし、王道の技術がなかったからこそ自分で手放せたことが大きいなって思います。

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自分の持ってるものをどう組み合わせると勝負できるものになるのか工夫をしながら探していくと、自分にとって向いている楽しい表現がみつかるはずです。自分がやってて楽しいっていうのがないことには、人が見て楽しいものは作れないと思います。「僕はこういうの好きなんだけどなー」っていうのを作って人に見せた時に、おれもそういう感じ好きだよって言ってくれる人が30人くらいいたら絵を描くことは立派な趣味になるし、それがいいって言ってくれる人が3000人ぐらいいたらプロになれるんですよ。結局それを「俺も好き」って言ってくれる人の数でしかないんですね。 だから自分を楽しませるために試行錯誤ができていれば、その人に見せることが出来るわけだし、見せた作品が人の興味をひくかどうかはやってみないとわかんない、そういう自分で人に見せる準備ができてるかどうかですよね。絵の世界っていうのは、そういうなんか変な独特なルートがいっぱいあるんですよね。それはすごく強みになるはずなんですよ。絵を描くことに資格はいらないですし、経験っていうのもなくて良かったりもする。そういう意味ですごく公平でもあって、未経験者だからこそ到達できる独特の表現も多々あるので、絵を描いたり文章を書いたりっていう表現の世界は実は優しいんですよね。そこでナンバーワンを目指す意味も理由もあんまりない、すごくいい世界だと思います。

  ヨシタケシンスケ × ブロンズ新社 世界で320万部突破記念!読者プレゼントキャンペーン実施中 期間内に対象の書籍を購入すると、抽選で3200名様へヨシタケシンスケさん特製デザインのコピックマルチライナーとノートをプレゼント!今回のコラボでしか手に入らない特別なコピックマルチライナーです。 ■キャンペーン公式サイト https://www.bronze.co.jp/yoshitake320/ ■キャンペーン期間 2020年11月16日(月)まで キャンペーンの詳細は公式ページをご覧ください。
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