劇団四季インタビュー

劇団四季

劇団四季とは、俳優・技術スタッフ・経営スタッフ約1300名で組織された、世界的に見ても最大規模の演劇集団。日本国内に専用劇場を持ち、ストレートプレイ(芝居)、オリジナルミュージカル、海外ミュージカル、ファミリーミュージカルなど幅広いレパートリーを上演しており、年間の総公演回数は3000回以上、総観客数は300万人を超える。

     

日本を代表する演劇集団・劇団四季。劇団四季の衣裳部でコピックを長い間ご愛用いただいているという話をお聞きし、四季芸術センターへお邪魔させていただきました。知られざる日頃のお仕事の話をはじめ、一体どのように現場でコピックが使われているのか、気になるプロの技術などを技術部衣裳担当の渡邉さんと後藤さんにお話をしていただきました。

 

劇団四季 技術部衣裳担当 渡邉さん(左)、後藤さん(右)

劇団四季 技術部衣裳担当 渡邉さん(左)、後藤さん(右)

— 本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、衣裳部ではどのようなお仕事をされているのでしょうか?

横浜にある劇団の本部・四季芸術センターでは『キャッツ』『ライオンキング』『アラジン』など、劇団四季で上演している衣裳のすべてを製作しております。製作といっても、生地づくり、縫製、修復など作業内容は多岐にわたります。

— すべての演目の衣裳をこちらで製作されているのですね。かなり多くの作業量だと思いますが、衣裳部に所属している方は何名いらっしゃるのですか?

衣裳部には50名所属しています。そのなかでも『キャッツ』の製作担当者は3名のみです。こちら(四季芸術センター)で日々の製作業務に関わるチームと、劇場で衣裳の修理等を担当する「本番付き」チームに分かれています。実際に衣裳製作ができるスタッフ数は少ないため、アルバイトのスタッフの方々と一緒に作業をしています。

衣裳部の作業場の一角

『キャッツ』コピック使用例

衣裳部の作業場の一角。『キャッツ』の衣裳やトルソーがずらりと並ぶ。

— かなりの少人数でそれぞれの演目を担当されているのですね。すべての衣裳デザインも衣裳部の方々が担当されているのですか?

特に海外で上演されている作品に関しては元々細かくデザインが決まっているものが多いので、いわゆる「衣裳デザイン」という業務はありません。ただ、例えばオリジナルの演目に関しては社内でデザインを起こすこともあります。小道具など他のチームの有志もデザイン案を出して社内コンペに参加できます。そこで選ばれたコンペ案を元にデザインを決定していくという流れになります。

— 四季の皆さまは以前からトゥールズ(コピックの直営店:旧店名は「いづみや」)のお客様ということで、コピックやリキテックスなどTooグループの製品を長くご愛用いただいていると伺いました。コピックはいつ頃から使用されているのでしょうか?

『キャッツ』の初演が1983年で、私(後藤さん)が入社した1995年頃には、すでにキャラクターに使用するコピックの色の指定がありました。ですからそれより前から使用していたということになります。元々コピックを使用しはじめる前から、いづみや(トゥールズの旧店名)で販売していたスピードライマーカー(※1)を購入して使っておりましたので、それらが廃番になるということで自然と後継モデルとして誕生したコピックに移行したようです。

※1 スピードライマーカー:マジックマーカーコーポレーションオブジャパン株式会社(米国マジックマーカー社と有限会社いづみやの合弁会社)が1969年より国内で生産開始したデザイン用マーカーの元祖。1987年のコピック発売までデザイン現場で広く使用された。

コピッククラシック

画材ケースにはキャラクターごとによく使う色番号のコピッククラシックが収納されている。手前の2本はデザインリニューアル前のコピックで20年以上前のものですが今でも現役で使えていますとのこと。

— コピックの販売当時からこれまでずっとお使いいただいているとは驚きました!長くご愛用いただきありがとうございます。製作段階ではどのような過程でコピックをお使いになっているのでしょうか。

主に衣裳に模様を直接描き込む際にコピックを使用しています。『キャッツ』の衣裳にはタイツが使われていますが、基本的にそれぞれの猫の模様をプリントした布を縫製して作っています。プリントしたものをタイツの形に縫製した段階でほとんど完成には近づいているのですが、猫の毛並みをより繊細に表現するためにコピックで1本1本描きこむ作業をしています。プリントしたのみだとぼやけた感じになってしまうので、それをブロードニブを使ってするどい線に見せています。あとは、縫製の段階で不自然なつなぎ目になってしまっているところに毛を描きたす作業などに使用しています。

『キャッツ』コピック使用例

衣装のタイツのつなぎ目の部分。このように、プリントされたままだと毛並みが途中で途切れて不自然な仕上がりになってしまうところをコピックで描きたしているそう。

— キャッツのタイツの柄はプリントされたものとのことですが、プリントでかなり細かい再現までできていると感じますが……?

プリントした布のままだと、繊維の粗さやその時の印刷の状態によって仕上がりも異なりますし納得のいくものは作れません。猫のするどい毛並みを繊細に表現するためには、やはり仕上げでコピックを使って模様を描きたし修正をする作業が必要になります。

— 備品棚に管理されているコピックはほとんどがコピッククラシックですね。

クラシックの大きめのブロードニブが使いやすいので、使っているのはほとんどがクラシックです。紙ではなく布に描いているためニブを傷めやすいのか、繊細な描き心地を出すために定期的にニブの交換をして使っています。あとは、このコピッククラシックの四角い形状が手にしっくりくるというのも使用している理由です。タイツをトルソーに着せて模様を描き込む時は、腕をあげたままや立ったままなど変わった体勢で長時間作業することが多いのですが、真四角なタイプのコピックだと手元を見なくても感覚でニブの角度を変えやすいので作業が効率的になります。

『キャッツ』コピック使用例

— コピックは基本的に紙とあわせて使用していただく画材ではありますが、布に直接描きこんで使用されているということで、気になった点をお聞かせください。衣裳は何度も洗濯されると思うのですが、色落ちはしませんか?

色落ちはほぼしません。というのも、着物を作る工程の中に蒸気をあてることで繊維の内部に染料を浸透させて色落ちを防ぐ「蒸し」という工程が存在するのですが、『キャッツ』の衣裳も色の定着のために蒸す工程を取り入れています。もちろん、俳優も汗をかきますし頻繁に洗濯もしますので、定期的に模様を書き足したりして常に綺麗な状態をキープしています。

— 着物づくりの工程に「蒸す」という作業が存在するとは知りませんでした。色々と試行錯誤して衣裳を作られてきたというのが伺えます。蒸す前後で着彩した色に変化はありませんか?

そうですね、使用する色によって程度はありますがどうしても蒸すと若干変わりますので、使用したい色と布の組み合わせのパターンをいくつか試して仕上がりが理想に近い色を探したり、あとは蒸しの作業の後に改めて色を重ねて調整しています。

— スピードライマーカーの時代からお使いとのことですので、(その後継品として発売された)コピックを使用されるようになったのは自然なことだったかもしれませんが、長くコピックを選びつづけていただいている理由がありましたら教えてください。

まずコピックには廃番の心配がない、というのが大きな理由です。四季は専用劇場を持っており、ロングラン公演を行うことが多いです。同じ公演を長期にわたって提供し続けるからこそ、途中で見た目に支障が出るような素材や画材の変更というのは避けたいところです。「このキャラクターにはこの色を使う」などのルールはすでに決めていますし、できれば変えたくないですね。ですので、色の廃番のリスクが低い製品だというのは重要な点です。
あとは、コピックはインクの補充やニブの交換ができて経済的かつゴミも出ないでエコに使用できるというのも選ぶ理由のひとつです。ニブ交換のほか、インク補充も日常的に行っていますよ。

『キャッツ』コピック使用例

— 特になくなったら困るという色はありますか?また、もし「こんな色がほしい」というご意見がありましたらお聞かせください。

黒です!ただ、100などの真っ黒な色ではなく、N-9T-10など、グレーの濃いトーンのものを重宝しています。俳優の汗や洗濯する時に使う水の違いによって、色落ちの感じも変わるのでその場合は使うグレーの種類を変えたりして思い通りの黒っぽい灰色を出せるように調整しています。
欲しい色に関しては、猫の毛にあうような深みのあるえんじ色を再現するため試行錯誤しているので、YR系統にもうちょっとバリエーションがあると嬉しいです。

— 貴重なご意見をありがとうございます!今後ともユーザーの皆さまに安心してお使いいただけるように一同精進いたします。本日はお時間をいただきありがとうございました。

劇団四季『キャッツ』公演情報

撮影:山之上雅信

都会のゴミ捨て場に集まった24匹の猫たちがそれぞれの生き方を歌うミュージカル『キャッツ』。この作品は、1983年に東京・西新宿のテント式仮設劇場で初演。日本初のロングラン公演は、演劇界のみならず広く社会的な注目を集め、1年間という当時の誰もが想像し得なかった大ロングラン記録を達成した。日本の演劇界に数々の新風を巻き起こしてきた『キャッツ』は現在東京・大井町にて上演中。今回の東京公演は2021年夏の千秋楽が決定しており、東京フィナーレへのカウントダウンが始まった。

劇団四季ミュージカル『キャッツ』東京公演について

■公演期間:ロングラン上演中~2021年夏 千秋楽決定(※2020年12月31日(木)公演分まで発売中)
■会場:キャッツ・シアター(品川区広町2-1-18)
■アクセス:JR京浜東北線 大井町駅西口より徒歩5分、東急大井町線 大井町駅より徒歩5分、東京臨海高速鉄道りんかい線 大井町駅出口Bより徒歩5分
■予約方法:SHIKI ON-LINE TICKET(24時間受付)
劇団四季予約センター 0570-077-489(午前10時~午後6時)

撮影:下坂敦俊

 

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